子どもの教育費を貯めたい。一方で、老後を考えると新NISAも止めたくない。40代の子育て世帯では、どちらへお金を回しても不安が残りやすいものです。
結論からいえば、教育費と新NISAは二者択一ではありません。数年以内に使うお金は預貯金で守り、10年以上先の資金には新NISAも取り入れる。使う時期を基準に分ければ、進学直前の値下がりを避けながら、老後準備も少しずつ続けられます。
本記事では、40代子育て世帯が先に整えたいお金の順番を、年齢別の考え方やモデル家計とあわせて解説します。
教育費と新NISAはどちらを優先?使う時期から決める

教育費と新NISAで迷ったら、利回りや非課税枠より先に、お金を使う時期を確認しましょう。入学金や授業料は、相場の回復を待って支払うわけにはいきません。一方、老後資金には長い準備期間があります。目的と期限を分ければ、教育費を守りながら資産形成を続ける道筋が見えてきます。
5年以内に使う教育費は預貯金を優先する
高校や大学の入学金は、相場が下がっていても支払う必要があります。教育費の全額を投資へ回すと、損失を抱えたまま売却する場面も考えられます。
使うまでの期間ごとに、基本の置き場所を分けてみましょう。
| 使うまでの期間 | 基本の置き場所 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 5年以内 | 預貯金中心 | 受験料・入学金・授業料 |
| 5~10年 | 現金多めで一部運用 | 中学・高校・大学準備 |
| 10年以上 | 新NISAとの併用 | 大学費用の一部・老後資金 |
5年や10年は、元本保証を示す境目ではありません。家計を整理するための目安です。
J-FLECが掲載する長期投資のシミュレーションでも、5年間の積立・分散投資では、元本を下回る結果が含まれています。20年間では結果の振れ幅が小さくなっていますが、過去データに基づく試算であり、将来の利益を約束する数字ではありません。
必要日が近い教育費ほど、増やす狙いより、予定どおり支払える状態を優先したほうが安心です。
10年以上先の資金は新NISAも選択肢に入る
教育費をすべて貯め終えてから老後資金へ進もうとすると、40代では運用に使える期間が短くなります。近い教育費を現金で準備しながら、少額の新NISAを並行する方法も現実的です。
新NISAへ回す資金は、次の条件で選びます。
- 当面使う予定のない資金
- 教育費と分けた老後資金
- 値下がり時も保有できる金額
- 毎月無理なく続けられる積立額
2024年から始まったNISAは、非課税保有期間が無期限です。年間投資枠は、つみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円。生涯の非課税保有限度額は合計1,800万円で、成長投資枠は内数で1,200万円までです。
ただし、枠を使い切る必要はありません。月5,000円や1万円でも、家計を崩さず続けられる額なら十分です。NISAは利益への税負担を抑える制度であり、元本割れを防ぐ仕組みではありません。
40代子育て世帯は5つのお金を順番に整える

新NISAの枠を見ると、早く投資額を増やしたくなる人もいるでしょう。私もお小遣いの範囲で運用していると、相場が上向いたときほど焦りを感じます。それでも、先に守りたいのは毎日の暮らしです。借入や赤字を残したまま積立を増やすと、急な出費のたびに投資商品を売る流れになってしまいます。
1.高金利の借入と毎月の赤字を先に減らす
リボ払いやカードローンの返済が残っているなら、新NISAの増額より返済を優先します。投資の利益は確定していませんが、借入を返せば、今後発生する利息負担を減らせます。
先に確認したい項目は次のとおりです。
- リボ払い残高
- カードローン
- 高金利の分割払い
- 毎月の恒常的な赤字
- ボーナス頼みの生活費
投資を一切始めてはいけない話ではありません。毎月1万円の赤字が続いているなら、新NISAへ1万円を入れる前に、赤字の原因を探します。
細かな家計簿が続かなくても、直近3か月の通帳とカード明細を見れば、お金の流れはつかめます。赤字を止めた後、その金額を積立へ回したほうが、途中で取り崩す心配を減らせます。
2.生活予備費を教育費と別口座に置く
生活予備費は、休職、家電の故障、車の修理など、予定外の支出に備える現金です。教育費と同じ口座へ入れると、残高は多く見えても、進学費用へ回せる金額がわからなくなります。
必要額は、家庭の働き方や固定費によって変わります。
| 世帯状況 | 確認したい負担 |
|---|---|
| 共働き | 片方の収入停止時の不足額 |
| 片働き | 主な収入源が止まる期間 |
| 住宅ローンあり | 毎月の返済額と固定費 |
| 自営業・独立予定 | 収入の波と入金時期 |
| 車が生活に必須 | 修理費と買い替え費用 |
「生活費の3か月分」などの目安はありますが、全世帯に同じ金額が合うわけではありません。収入が減った際、毎月いくら不足するかを計算すると、わが家に必要な額が見えてきます。
生活予備費が足りない間は、新NISAを少額へ減らすか、一時的に積立を止める判断も堅実です。
3.教育費は希望進路から逆算する
教育費の目標額は、平均額だけで決めず、子どもの希望進路から考えます。
文部科学省の令和5年度調査では、幼稚園から高校までの15年間にかかる学習費総額は、すべて公立なら約614万円、すべて私立なら約1,969万円です。学校教育費に加え、塾や習い事などの学校外活動費も含まれます。
進路を考える際は、次の項目を確認します。
| 確認項目 | 家計への影響 |
|---|---|
| 中学・高校の公私選択 | 授業料・塾代・受験費用 |
| 大学の進学先 | 国公立・私立・学部差 |
| 通学方法 | 自宅通学・一人暮らし |
| 受験校数 | 検定料・交通費・宿泊費 |
| 奨学金の利用方針 | 親子の負担割合 |
文部科学省の令和7年度調査では、私立大学学部の初年度学生納付金等の平均は150万7,647円でした。授業料、入学料、施設設備費、実験実習料などを含む平均です。
平均額を一度に貯めようとすると、家計への負担が重くなります。まずは受験料、入学金、初年度納付金など、入学前後に必要な現金から逆算しましょう。
4.不足する教育費を残り月数で割る
教育費の目標額を決めたら、現在の教育費残高を差し引きます。残った不足額を、進学までの月数で割れば、毎月の積立目安が出ます。
たとえば、5年後までに180万円を追加で貯める場合、残り60か月で割ると月3万円です。月3万円が家計に重ければ、目標額、進路、ボーナスから補う金額などを夫婦で見直します。
- 教育費口座の現在残高
- 入学までの残り月数
- 進学時に必要な予定額
- 児童手当から回す金額
- ボーナスから補う金額
数字を出す目的は、無理な節約を始めるためではありません。毎月いくら準備すれば不足を埋められるか、早めに把握するためです。
不足額が大きい場合は、投資の利益だけで埋めようとせず、現金積立と支出の見直しを軸にします。
5.残った余力から新NISAの積立額を決める
新NISAの積立額は、非課税枠から逆算せず、家計に残る余力から決めます。生活費、借入返済、生活予備費、教育費積立を差し引いた後の金額が基準です。
確認したい項目を整理します。
- 教育費積立後の余剰資金
- ボーナス抜きで続けられる額
- 急な支出にも耐えられる金額
- 値下がり時も保有できる額
- 年1回見直せる積立設定
毎月3万円の余力があるなら、教育費2万円、新NISA1万円の配分も考えられます。教育費の現金が計画どおり貯まっている家庭なら、新NISAの割合を増やしてもよいでしょう。
相場が下がった月にも生活へ影響せず、教育費積立も止めずに済む金額。それが、わが家に合う新NISAの積立額です。
子どもの年齢別に教育費と新NISAの配分を考える

子どもの年齢は、資金配分を決める手掛かりになります。ただし、同じ小学5年生でも、私立中学を受験する家庭と公立中学へ進む家庭では、お金が必要になる時期が異なります。年齢だけで割合を固定せず、次の入学金や授業料を支払う時期から逆算しましょう。
未就学児・小学校低学年は新NISAを併用しやすい
大学入学まで10年以上ある家庭では、教育費の一部に新NISAを組み合わせる余地があります。長期・積立・分散を意識すれば、購入時期や投資先を分けながら資産形成を進められます。
ただし、NISAを使っても元本は保証されません。金融庁も、投資には元本割れなどのリスクがあり、長期・積立・分散はリスクを抑える選択肢のひとつと説明しています。
| 家庭の状況 | 教育費の準備 | 新NISAの扱い |
|---|---|---|
| 生活予備費が不足 | 現金を優先 | 少額または一時停止 |
| 予備費を確保済み | 現金と運用を併用 | 無理のない範囲 |
| 私立中学を検討 | 現金比率を高める | 老後資金中心 |
| 公立進学を予定 | 大学費用を積立 | 長期資金へ活用 |
未就学児でも、私立小学校や中学受験を予定しているなら、支出時期は近づいています。反対に、小学生でも大学進学まで公立を予定しているなら、長めの運用期間を取りやすくなります。
子どもの年齢だけを見るのではなく、次に必要な金額と時期を夫婦でそろえておきましょう。
小学校高学年・中学生は現金の比重を上げる
小学校高学年から中学生になると、塾、模試、受験、部活動などの負担が増え始めます。スマートフォン代や交通費も加わり、家計の固定費が変わりやすい時期です。
確認したい支出を並べます。
- 塾代の増加
- 模試・受験料
- 入学金の準備
- 制服・教材費
- 部活動用品
- 私立進学の再確認
新NISAをすぐ売却する必要はありません。まず高校入学までに必要な現金を確認し、毎月の積立額を調整します。
教育費が増える時期に新NISAの設定を守ろうとして、食費や日用品を削りすぎるのは考えものです。一時的に減額し、家計に余裕が戻ってから増額する流れでも問題ありません。
高校生は進学予定額を投資から切り離す
大学入学まで3年ほどになったら、入学金や初年度納付金など、支払い予定が見えている金額を預貯金へ移します。投資商品を保有したままでは、相場が下がった年にも売却が必要になるからです。
J-FLECの教材では、長期・積立・分散によって投資の振れ幅を抑える考え方が示されています。近く使う教育費へ一律に投資が向かないと断定するより、使う時期が近い資金ほど価格変動への注意が増す、と考えるのが自然です。
新NISAを続ける場合は、教育費ではなく老後資金として分けます。入学時の不足額が100万円あるなら、残り月数で割り、現金積立を優先します。
進学直前は、増やす狙いより、予定額を払える状態へ近づける時期です。
40代・子ども2人のモデル家計で配分を考える

ここでは、40代夫婦と8歳・5歳の子どもがいる家庭を想定します。上の子の大学入学まで約10年、下の子は約13年です。まだ時間があるように見えても、中学受験や高校進学を考える家庭では、もっと早く現金が必要になります。今の余力だけでなく、数年後に教育費が増えた家計も想像してみましょう。
毎月3万円・5万円の振り分け例
同じ余剰資金でも、生活予備費と教育費の準備状況によって配分は変わります。
| 家計状況 | 毎月の余力 | 現金積立 | 新NISA | 判断の軸 |
|---|---|---|---|---|
| 生活予備費が不足 | 3万円 | 3万円 | 0円 | 予備費の回復 |
| 予備費を確保済み | 3万円 | 2万円 | 1万円 | 教育費と老後の並行 |
| 教育費が計画内 | 5万円 | 3万円 | 2万円 | 長期資金も積立 |
| 進学まで5年以内 | 5万円 | 4万円 | 1万円 | 近い支出を優先 |
表の金額は、統計に基づく推奨配分ではありません。考え方を整理するための例です。住宅ローン、家賃、車の維持費、子どもの人数、希望進路によって適切な配分は変わります。
私も8歳と5歳の子どもがいる立場なら、「大学までまだ時間がある」と思ってしまいます。ただ、2人分の塾代や進学費用が重なれば、現在の余力がそのまま残るとは限りません。
積立額を決める際は、数年後に教育費が増えても続けられるかまで確認しておきたいところです。
子ども2人は進学費用が重なる年を確認する
子どもが2人いる家庭では、教育費の総額だけでなく、支払う年月を確認します。上の子の大学入学と下の子の高校入学が重なる年には、入学金、授業料、制服、教材、受験費用が短期間に集中します。
家計表へ書き出したい項目は次のとおりです。
- 子どもごとの入学年度
- 受験料の支払時期
- 入学金の納付月
- 授業料の納付回数
- 教育費口座の残高
- 年ごとの不足見込み
年間100万円を準備する計画でも、2月から4月に70万円が必要なら、その時点で口座残高が足りなければ支払えません。
教育費専用口座には、年間総額だけでなく、支出が最も重なる月を基準に現金を残します。新NISAの売却を前提にしない計画なら、相場を気にしながら入学金を準備する不安を減らせます。
教育費と新NISAの失敗を避けて30分で順番を決める

教育費を現金だけで貯めると老後が不安になり、新NISAを増やすと進学前の値下がりが気になります。40代子育て世帯なら、どちらへ寄せても心配は残るものです。完璧な割合を探すより、家計の変化に合わせて直せる仕組みを整えましょう。
避けたい4つの失敗を確認する
教育費と新NISAを両立する際は、どちらか一方へ極端に寄せない姿勢が役立ちます。
- 教育費の全額投資
- NISA枠を埋めるための無理
- 老後積立の長期停止
- 進学直前までのリスク運用
新NISAは、教育費を必ず増やせる制度ではありません。利益が出た際の税負担を抑える仕組みであり、損失を補う仕組みではないからです。
反対に、教育費への不安から老後積立を長く止めると、40代から使える運用期間が短くなります。月5,000円などへ減額し、家計が落ち着いてから増額する方法もあります。
6つの数字を30分で書き出す
精密な教育費シミュレーションを最初から作らなくても、家計の現在地は確認できます。通帳、給与明細、カード明細を手元に置き、次の数字を書き出します。
- 現在の預貯金
- 毎月の余剰資金
- 生活予備費の不足額
- 子どもの希望進路
- 入学までの残り年数
- 教育費の不足見込み
教育費の不足額は、目標額から現在の教育費残高を引いて求めます。その金額を入学までの残り月数で割れば、毎月必要な現金積立の目安が出ます。
計算後に余力が残れば、新NISAへ回す額を決めます。余力が残らない場合は、積立投資で無理に埋めようとせず、支出や目標額を見直します。
お金を3つの箱に分ける
預貯金と投資資産は、使う時期に合わせて3つへ分けます。
| 資金の種類 | 主な役割 | 基本の置き場所 |
|---|---|---|
| 生活予備費 | 急な支出への備え | 預貯金 |
| 5年以内の教育費 | 受験・入学・授業料 | 預貯金 |
| 10年以上先の資金 | 大学費用の一部・老後 | 新NISAも検討 |
5~10年先の資金は、希望進路や家計の安定度に応じて現金を多めにします。年数だけで機械的に分けず、必要日に予定額を支払えるかを基準に調整しましょう。
教育費と新NISAは、片方を選んで、もう片方を諦める話ではありません。
近く使うお金は現金で守り、長く使わないお金は新NISAで育てる。
この順番なら、子どもの進路を支えながら、親の老後準備も少しずつ続けられます。年に一度、進級や昇給の時期に配分を見直せば、家計が変わっても慌てずに済みます。
参考資料
- 金融庁「NISAを知る」
- 金融庁「NISAを利用する皆さまへ」
- 文部科学省「令和5年度 子供の学習費調査」および訂正資料
- 文部科学省「令和7年度 私立大学等の学生納付金等調査」
- J-FLEC「資産形成」
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。投資商品には元本割れのリスクがあります。家計状況や希望進路を踏まえ、最終的な判断は各家庭で行ってください。

