暗号資産のステーブルコインとは?仕組みや種類、日本国内での購入リスクを徹底解説

暗号資産市場は、日々大きく価格が変動します。ビットコインの急激な値動きを見て、購入を敬遠する人も少なくありません。 その一方で、価格が安定するように設計された「ステーブルコイン」という種類も存在します。

ステーブルコインは米ドルなどの法定通貨と価値が連動するため、資産の避難先や決済手段として注目されています。本記事では、基礎的な仕組みから主な種類、日本国内での扱いについて専門的な視点で解説します。

暗号資産(仮想通貨)のステーブルコインとは?

価格変動が激しい暗号資産市場で、法定通貨のような安定感をもつのがステーブルコインです。その仕組みを解説します。

価格が安定するように設計された仕組み

ステーブルコインは、米ドルや日本円などの法定通貨と価値が「1対1」で連動するように作られています。

価格が一定範囲に収まるよう、厳密な裏付け資産やアルゴリズムで管理されているのが特徴です。裏付けとなる資産がなければ、デジタルデータとしての信用を維持できないからです。

価格安定のメカニズム

  • 発行額と同額の法定通貨を保管
  • 市場の需要と供給を自動調整
  • 異なる暗号資産を担保に設定

これらの仕組みにより、私たちは安心して価値を保存できます。デジタル上の現金として機能するため、決済や送金での利用が進んでいます。

ビットコインや他の暗号資産との決定的な違い

最大の違いは「価値の裏付け」と「価格変動の大きさ」にあります。

ビットコインは管理者が不在で需給のみで価格が決まりますが、ステーブルコインは明確な目標価格があります。主な違いは以下のとおりです。

項目ビットコインステーブルコイン
価格変動激しいほぼ一定(安定的)
価値の源泉希少性と需給法定通貨等の担保
主な用途投資・投機決済・価値保存

表を見ると、両者の役割が全く異なるとわかります。資産を増やしたいときはビットコイン、守りたいときはステーブルコインと使い分けるのが賢明です。

なぜ今、ステーブルコインが注目されているのか

世界中でインフレや自国通貨安が進み、資産を守る手段として需要が急増しています。

自国通貨よりも信頼できる「デジタルドル」として機能するからです。銀行口座をもてない人々でも、スマホだけで米ドル同等の資産を保有できる点が革命的といえます。

特に経済が不安定な国では、給与をステーブルコインで受け取るケースも増えています。単なる投資対象ではなく、生活を守る実用的なインフラとして、その価値が再評価されています。

ステーブルコインの主な3つの種類と特徴

ステーブルコインには、価値を保つための仕組みが大きく分けて3種類あります。それぞれの特徴とリスクを解説します。

法定通貨担保型(USDT・USDCなど)

発行企業が米ドルなどの法定通貨を保有し、価値を裏付けているタイプです。

最も仕組みがシンプルで理解しやすく、現在の市場で主流となっています。1コイン=1ドルの価値を保つため、発行枚数と同額の資金が銀行などに保管されます。代表的な銘柄はテザー(USDT)やUSDコイン(USDC)です。

法定通貨担保型の特徴

  • 価格の安定性が極めて高い
  • 発行企業の信用に依存する
  • 定期的な監査が必要になる

多くの海外取引所で、法定通貨の代わりとして基軸通貨に採用されています。初心者はまず、最も普及しているこのタイプから利用を検討するとよいでしょう。

暗号資産担保型(DAIなど)

法定通貨ではなく、イーサリアムなどの暗号資産を担保にして発行されるタイプです。

特定の管理者が存在せず、プログラム(スマートコントラクト)によって自動的に発行・償還されます。担保となる暗号資産の価格変動リスクに備え、発行額よりも多くの担保を預け入れる「過剰担保」の仕組みを採用しています。

管理者に依存しないため透明性が高く、分散型金融(DeFi)のユーザーに支持されています。中央集権的なリスクを避けたい場合に適した選択肢です。

アルゴリズム型(無担保型)

明確な裏付け資産をもたず、供給量を調整して価格を維持するタイプです。

プログラムが市場の状況に合わせてコインの発行枚数を増減させ、価格を安定させようと試みます。資金効率は良いですが、市場の信用を失うと価格維持が困難になるリスクを含んでいます。

種類担保資産リスク
法定通貨型現金・債券発行元の破綻
暗号資産型仮想通貨担保割れ
無担保型なし仕組みの崩壊

過去にはシステムが機能不全に陥り、価値が暴落した事例もありました。構造上のリスクが高いため、利用する際は銘柄の仕組みをよく調べる必要があります。

保有・活用するメリット

値動きがないコインを持つ意味は何でしょうか。投資家が実際に実感じている具体的なメリットを紹介します。

市場暴落時の資産の避難先になる

相場全体が下落した際、一時的に資金を逃がす「避難シェルター」として機能します。

ビットコインなどの価格が急落したとき、日本円に戻すには手間と時間がかかります。しかし、ステーブルコインへ交換すれば、ブロックチェーン上で即座に資産価値を固定できます。暴落の嵐が過ぎるのを安全な場所で待てるのです。

下落局面で資産を減らさないために、多くのトレーダーがこの方法を利用しています。利益を守るための必須テクニックといえます。

海外取引所やDeFi(分散型金融)への参加チケット

世界中の金融サービスにアクセスするための「入場パスポート」となります。

日本の取引所では扱っていない銘柄や、高い利回りが得られるDeFiを利用するには、主にUSDTやUSDCが必要です。これらを持っていれば、国境を越えてあらゆるサービスを使えるようになります。

主な活用シーン

  • 海外限定の銘柄を購入
  • DeFiで貸し出して金利獲得
  • NFTマーケットでの決済

日本円だけではアクセスできない、広大なWeb3の世界が広がります。新しい投資チャンスをつかむために、使いこなせるようになりましょう。

国際送金が銀行よりも速く安価にできる

既存の銀行システムを使わずに、個人間で直接、送金できるため送金コストと時間を大幅に圧縮できます。

銀行を通じた海外送金は、高い手数料と数日の時間が必要です。一方、ステーブルコインなら土日や祝日に関係なく、わずか数分で着金します。

項目銀行による海外送金ステーブルコイン
送金速度数日かかる数分〜数十分
手数料数千円と高い数円〜数百円
稼働時間営業時間のみ24時間365日

ビジネスの支払いや海外への送金に活用する事例も増えています。国境を意識しないスムーズな資金移動が可能です。

事前に知っておくべきリスクと問題点

安全に見えるステーブルコインにも、特有の落とし穴が存在します。資産を守るために、必ずリスクを把握しましょう。

ペッグ(連動)が外れて価格が下落するリスク

「常に1ドル=1コイン」の前提が崩れる、「デペグ」と呼ばれる現象が起こり得ます。

市場のパニックやシステムへの攻撃により、価格の維持が困難になるケースがあるからです。過去には、無担保型のコインが数日でほぼ無価値になる大暴落も発生しました。

一度信頼が失われると、売りが売りを呼ぶ連鎖的な下落が止まりません。絶対に安全な資産ではなく、急激な価格変動に巻き込まれる恐れがある点に注意が必要です。

発行企業の破綻や信用不安

法定通貨担保型であっても、発行元の企業が経営破綻すれば、預けた資産が戻らない可能性があります。

銀行預金とは異なり、国の公的な保護制度(ペイオフなど)の対象外となる場合がほとんどだからです。また、公表している裏付け資産の内訳が不透明な場合、信用不安から取り付け騒ぎが起きるリスクもあります。

チェックすべき信用リスク

  • 準備金の監査レポートはあるか
  • 裏付け資産は現金か、リスク資産か
  • 運営企業の信頼性と実績

これらの情報を確認せず、知名度だけで選ぶのは危険です。発行元の健全性を定期的にチェックする習慣を身につけましょう。

日本国内の法規制と税金面の注意点

日本国内では、海外発行のステーブルコインの扱いや税制が複雑で、利益が出た場合の税金には特に注意が必要です。

暗号資産取引で得た利益は「雑所得」に分類され、給与所得などと合算して課税されます。株式投資のような分離課税(一律約20%)とは異なり、所得が増えるほど税率が高くなる仕組みです。

項目株式・FX暗号資産(ステーブルコイン含む)
所得区分申告分離課税雑所得(総合課税)
最大税率約20%最大55%(住民税含む)
損益通算可能原則不可

知らずに利益を確定させると、後から高額な納税が必要になるケースがあります。取引を始める前に、税金の仕組みを正しく理解しておく必要があります。

代表的なステーブルコインと国内の現状

世界で流通する主要な銘柄と、日本国内における取り扱い状況について整理します。

テザー(USDT)とUSDコイン(USDC)

時価総額の大部分を占めるのが、この2大巨頭です。どちらも米ドルと連動しますが、運営方針に違いがあります。

USDTは最も長い歴史と最大の流動性をもち、USDCは法令遵守と透明性を重視しています。それぞれの特徴は以下のとおりです。

項目テザー(USDT)USDコイン(USDC)
発行元Tether社Circle社
特徴取引量が世界一透明性が高い
主な用途海外取引所の基軸米国での決済・DeFi

海外取引所を使う場合、まずUSDTを用意するのが一般的です。一方、安全性を最優先したい投資家はUSDCを選ぶ傾向にあります。自身の目的に合わせて使い分けるのが良いでしょう。

分散型で管理されるダイ(DAI)

特定の企業ではなく、プログラムによって自律的に運営されているのがDAI(ダイ)です。

米ドル連動型ですが、裏付け資産としてイーサリアムなどを過剰に担保しています。中央管理者が存在しないため、企業の都合で資産が凍結されるリスクがありません。

DeFi(分散型金融)を利用するユーザーの間で、根強い人気があります。「誰にも支配されないお金」の思想を体現した暗号資産といえます。

日本発のステーブルコイン(JPYCなど)と購入方法

日本円と連動する国産のステーブルコインも登場しており、国内法に準拠した形で発行されています。

代表的な「JPYC」は、日本円で簡単に購入できるため、海外銘柄のような複雑な交換手続きが不要です。 機能としてはステーブルコインのように使えますが、法律上は商品券などと同じ「前払式支払手段」として発行されています。銀行などが発行する厳密な意味での「ステーブルコイン(電子決済手段)」とは区別されますが、その分、手軽に利用できるのが魅力です。

主な入手・購入ルート

  • 公式サイトから銀行振込で購入
  • DEX(分散型取引所)で交換
  • 一部の対応ウォレット内で購入

2023年の法改正により、銀行や信託会社による発行も可能になりました。今後、より身近な決済手段として普及していくでしょう。変化する国内の状況を注視する必要があります。

ステーブルコインの未来と賢い付き合い方

単なる投資ツールを超え、私たちの生活に密着した「次世代のお金」へと進化しています。これからの展望と、安全に利用するための心構えを伝えます。

デジタル決済手段としての普及の可能性

遠くない未来、日常の買い物やネット通販で当たり前に使える日が来ます。

大手金融機関やテック企業が、決済インフラとしての導入を本格化させているからです。すでにクレジットカード会社がUSDCでの決済機能テストを開始するなど、実用化へ向けた動きが加速しています。

企業の導入事例と動向

  • PayPalによる独自コインの発行
  • Visa等の国際ブランドの対応
  • 銀行間送金システムでの活用

国境や通貨の壁を意識せず、スムーズに支払いができる世界が近づいています。現金やカードに次ぐ、第3の決済手段として定着するのは時間の問題といえます。

リスクを理解して安全に活用するためのポイント

便利な反面、すべての資産をステーブルコインで保管するのは推奨できません。

システム障害や発行元のトラブルなど、予期せぬ事態で資産が凍結される恐れがあるからです。「安全な資産」と過信せず、リスク分散を徹底する必要があります。

行動パターンリスク度推奨される対策
全額保管資産の一部のみにする
単一銘柄USDTとUSDCに分ける
ハードウェア管理オフラインで保管する

常に最悪のケースを想定し、万が一ゼロになっても生活が破綻しない範囲で利用しましょう。正しい知識と慎重な判断が、あなたの資産を守ります。

まとめ:ステーブルコインはWeb3世界へのパスポート

ここまで、ステーブルコインの仕組みから種類、リスクまでを解説しました。

激しい価格変動に疲れた人にとって、価値が安定したこのコインは強力な武器になります。しかし、銀行預金のような元本保証はありません。リスクを正しく理解した上で利用する必要があります。

最後に、今回のポイントを振り返ります。

記事の要点まとめ

  • 法定通貨と価値が連動するデジタル資産
  • 暴落時の避難先や海外サービス利用に必須
  • USDTやUSDCが主流だがリスクもある
  • 国内では税金区分(雑所得)に注意が必要

まずは少額から購入し、実際に海外取引所への送金やDeFiでの運用を体験してみましょう。

小さな一歩を踏み出すだけで、日本円だけでは見えなかった新しい金融の世界が広がります。変化を恐れず、テクノロジーの進化を味方につけてください。

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