暗号資産(仮想通貨)の世界では、「持っているだけ」で報酬が得られるステーキング、「貸すだけ」で利息を稼げるレンディングなど、副収入(インカムゲイン)の手段が年々注目を集めています。銀行の預金金利がほぼゼロに近い今、これらは一見すると非常に魅力的です。
しかし、甘い話には裏があり、表示される「利回り(年率)」だけを見て飛びつくと痛い目を見ることも少なくありません。例えば、資産がロックされてしまう期間、価格変動、日本の税制や規制、プラットフォームの信頼性など、見逃しがちなリスク要素が複雑に絡み合っています。
この記事では、「暗号資産で副収入を得たい人」に向けて、ステーキング・レンディングの利回りをどう読み取るか、どのような事業者リスクを点検すべきかを、具体例とチェックリストを交えて解説します。これを読めば「見せかけの高利回り」に踊らされず、長期で安全かつ効率的な運用を目指す判断力が手に入ります。
暗号資産で副収入を得る方法の仕組み
「暗号資産で副収入を得たい!」と思ったときに、まず候補に挙がるのが レンディング と ステーキング です。どちらも“資産を動かさずに増やす”仕組みですが、中身を理解していないと「思っていたのと違った…」となりがちです。ここでは初心者にもわかりやすく、両者の基本を整理します。
レンディングとは?
レンディングは、あなたが保有している暗号資産を取引所や事業者に「貸し出す」ことで、利息のような報酬を受け取れる仕組みです。イメージとしては「銀行にお金を預けて利息をもらう」のに近いですが、大きな違いは以下のとおりです。
- 銀行預金:元本保証あり、利息は0.001%程度とごくわずか
- 暗号資産レンディング:元本保証なし、利回りは数%〜数十%も狙えることもある
国内では、Coincheckレンディング や bitbankレンディング が代表的です。貸出期間(14日・30日・90日など)によって利回りが変動します。
ステーキングとは?
ステーキングは、Proof of Stake(PoS)という仕組みを採用しているブロックチェーンに自分の暗号資産を預けることで、ネットワーク維持に参加し、その報酬をもらう仕組みです。
例えば、国内取引所の例では以下のようなサービスがあります。
- GMOコインのステーキング(ATOM, XTZなど)
- bitFlyerのステーキング(IOST)
こちらは「貸し出す」というより「預けてブロックチェーンに貢献する」イメージに近いです。ロック期間がないケースも多く、比較的柔軟に出し入れできます。
レンディング vs ステーキング 比較表
初心者がまず気になる「どちらを選べばいいの?」を整理したのが以下の表です。
項目 | レンディング | ステーキング |
---|---|---|
利回り | 1〜5%(国内) | 2〜6%(銘柄により変動) |
元本保証 | なし | なし |
仕組み | 事業者に貸す | ブロックチェーンに参加 |
ロック期間 | 数日〜数か月あり | なし〜短期(銘柄次第) |
主な国内取引所 | Coincheck, bitbank | GMOコイン, bitFlyer |
このように、レンディング=「貸して利息」/ステーキング=「預けて貢献」 と理解しておくと整理しやすいです。どちらも銀行預金より圧倒的に高い利回りが期待できますが、リスクもつきまとうため、次に「利回りの見方」を押さえておく必要があります。
利回り(報酬率)の読み方・見極め方
暗号資産のレンディングやステーキングでは「年率○%」と書かれているのをよく目にします。ですが、これはそのまま“手に入る利益”を意味するわけではありません。ここでは、利回りの読み方とチェックすべきポイントを整理します。
利回り(報酬率)の読み方・見極め方
暗号資産のレンディングやステーキングでは「年率○%」と書かれているのをよく目にします。ですが、これはそのまま“手に入る利益”を意味するわけではありません。ここでは、利回りの読み方とチェックすべきポイントを整理します。
公称利回りだけではわからない要素
- 手数料
取引所が手数料を差し引くケースがあり、表示利回りより実際の受け取りが少なくなることがあります。 - 報酬トークンの価格変動
報酬は暗号資産で支払われるため、日本円換算の価値は日々変動します。例えば、利回り5%でも価格が半分になれば実質マイナスです。 - ロック期間の有無
レンディングは「90日間ロック」など、途中で解約できないケースが多いです。急な値下がりに対応できないリスクを含みます。 - 分配頻度
報酬が「毎日」「毎月」「満期一括」かで、複利効果や再投資のしやすさが変わります。
実質利回りを計算するイメージ
例えば、Coincheckレンディングで年率5%、30日貸出をしたと仮定します。
- 貸出額:10万円相当のBTC
- 公称利回り:5% → 1年間で約5,000円
- 実際は30日なので:5,000円 × (30/365) ≒ 411円
ここからさらに、BTC価格が30日で10%下落したらどうでしょう?
- 報酬 ≒ 411円分のBTC
- 価格下落で資産全体は約9万円に減少
結果として「利回りで増えた分」より「価格変動で減った分」が大きくなります。
利回りが変動する要因
利回りは固定ではなく、状況によって上下します。主な変動要因は以下の通りです。
- ネットワークの参加者数(ステーキングでは参加者が増えると分配報酬は減る)
- 需要と供給(レンディングでは借り手が多ければ金利上昇、少なければ低下)
- 取引所のキャンペーン(期間限定で高利回りを設定することもある)
- 規制変更や市場状況(海外レンディングサービスでは突然停止や条件変更も)
つまり、利回りは「数字だけで判断せず、実質的にどれだけ増えるか」を見ることが大切です。
次に、さらに重要な「事業者リスクの点検項目」に移りましょう。
事業者リスクの点検項目
暗号資産で副収入を得るとき、見落としがちなのが 「事業者が本当に信頼できるか?」 という視点です。
レンディング・ステーキングは、あなたの資産を事業者に預ける仕組みなので、リスク管理を怠ると最悪「資産が戻ってこない」という事態になりかねません。ここでは、初心者でも確認できるチェック項目を紹介します。
登録・ライセンスの確認
- 国内取引所は 金融庁に登録 されているかを必ず確認しましょう。
- 海外事業者を利用する場合、無登録のケースも多く、突然サービス停止や出金制限がかかるリスクがあります。
👉 例:Coincheck、bitbank、GMOコイン、bitFlyer はいずれも金融庁登録済み。
資産の分別管理・保管体制
- ユーザー資産を事業者資産ときちんと分けて保管しているか?
- コールドウォレット(ネットから切り離した保管方法)を採用しているか?
- マルチシグ(複数の署名が必要な仕組み)でセキュリティ強化されているか?
こうした仕組みがない事業者は危険度が高いです。
運営透明性・過去実績
- 定期的に監査報告やセキュリティレポートを公開しているか?
- 取引所としての運営歴が長いか?(歴史が短すぎるとリスク高)
- 利用者の評判や口コミはどうか?
過去の破綻・事件から学ぶ
実際に、海外の大手レンディングサービスが破綻した事例があります。
事業者 | 発生年 | 内容 | 教訓 |
---|---|---|---|
Celsius | 2022年 | 出金停止 → 破産申請 | 高利回りをうたう事業者でも破綻するリスクあり |
BlockFi | 2022年 | FTX破綻の影響で経営難 → 破産 | 事業者の依存関係も要注意 |
Cred | 2020年 | 詐欺まがい運営で資産消失 | ライセンスや運営実態の確認が不可欠 |
初心者の方は「国内の金融庁登録済み取引所」から始めるのが無難です。海外事業者は利回りが高くても、リスクを理解していないと大きな損失につながりやすいからです。
税務・法規制上の注意点
暗号資産で得た副収入(レンディングやステーキングの報酬)は、日本の法律では「雑所得」として課税されるのが基本です。株やNISAとは全く扱いが違うため、必ず押さえておく必要があります。
日本国内での税区分
- 雑所得扱い
→ 年間20万円を超える利益があれば確定申告が必要。 - 累進課税
→ 最大で45%+住民税10%がかかるケースもあり、株やFX(分離課税20%)より税率が高い。 - 事業所得になる場合も
→ 専業的に大規模運用している場合、事業所得と判断される可能性がある。
申告の実務対応
- 報酬は暗号資産(BTCやETHなど)でもらうため、受け取った時点の日本円換算額を記録する必要があります。
- 取引所の取引履歴をダウンロードして管理すると便利です。
- 複数の取引所やウォレットを使っている場合は、損益計算ツール(Cryptact、Gtaxなど)を利用するとスムーズ。
規制面での注意
- 国内のレンディング・ステーキングサービスは、金融庁登録済みの事業者が提供するものを選ぶのが安心。
- 海外サービスの場合、日本居住者向けサービス提供が規制違反となるケースもあり、突然利用できなくなるリスクがあります。
- マネーロンダリング対策(KYC=本人確認)が厳格化されており、匿名利用は難しくなっています。
👉 ポイントは「税金の扱いはシビア」「海外サービスは規制で止まる可能性あり」。
知らずに始めると「儲かったのに税金で赤字」「突然サービス終了」という事態もありえます。
運用戦略とリスク対策
暗号資産で副収入を狙うなら、「利回り」だけでなく「リスクをどのように分散・管理するか」がカギになります。ここでは初心者でも取り入れやすい戦略を紹介します。
資金分散の方法
- 取引所の分散
→ Coincheck、bitbank、GMOコインなど複数の国内業者を利用することで、1社トラブル時の被害を抑えられる。 - 銘柄の分散
→ BTCだけでなくETHやPoS銘柄(ATOM、IOSTなど)を組み合わせることで、リスクを分散。 - サービスの分散
→ レンディングとステーキングをバランスよく組み合わせる。
ロック期間・流動性リスクの許容度設定
- レンディングは「14日」「30日」「90日」など期間を選べる場合が多い。
- 初心者はまず「短期(14日〜30日)」から始めて、資金を拘束しすぎないのが安心。
- ステーキングは比較的流動性が高いため、メイン資産の一部を置くのに向いている。
モニタリング指標
副収入を安定させるには「放置せずにチェック」することが大切です。
- 利回りの変動 → 異常に高い利回りが提示されたら要注意。
- 取引所のニュース → 提携解消やシステム障害が報じられたら一時的に運用を控える判断も。
- ネットワークの健全性(PoS銘柄の場合) → ハッキングや攻撃のリスクが報じられていないかを確認。
初心者向けモデルプラン例
分散対象 | 配分イメージ | 利用例 |
---|---|---|
レンディング(短期) | 50% | Coincheckで30日レンディング |
ステーキング | 30% | GMOコインでATOMステーキング |
現物保有(待機資金) | 20% | bitbankのBTCをそのまま保有 |
このように、複数サービスと銘柄を組み合わせることで「副収入を得ながらも資金を守る」運用が可能になります。
まとめと実践チェックリスト
暗号資産で副収入を得る方法として人気のレンディングとステーキング。
高い利回りが魅力ですが、実際には 「利回りの裏にある条件」 と 「事業者の信頼性」 を見極めることが何より大切です。
この記事のポイントを振り返ると:
- レンディング=「貸して利息」、ステーキング=「預けて貢献」
- 公称利回りだけでなく「実質利回り」を確認する
- 事業者リスク(金融庁登録、資産管理体制、過去実績)を必ずチェック
- 税金は雑所得扱い、累進課税で負担が大きい可能性あり
- 運用は分散が基本。複数銘柄・複数サービスを組み合わせる
実践チェックリスト(初心者向け)
- 利用する取引所は金融庁登録済みか?
- 利回りは「公称」だけでなく「実質(価格変動・手数料込み)」で見ているか?
- 資産は複数の取引所・銘柄に分散しているか?
- レンディングは短期から始め、ロック期間を把握しているか?
- 税金の申告準備(取引履歴の保存・損益計算ツール)はしているか?
- 運営者の過去トラブルや評判を確認しているか?
- 定期的に利回りやサービスの最新情報をモニタリングしているか?
初心者の方は、まずは 「国内の大手取引所 × 少額 × 短期レンディング/ステーキング」 から始めてみましょう。
慣れてきたら、銘柄やサービスを少しずつ分散し、自分なりのリスク許容度に合わせた運用スタイルを見つけていくのがおすすめです。