投資信託に興味はあっても、「せっかく貯めたお金が減ったら困る」と感じる人は多いと思います。私も家族をもつ会社員なので、教育費や急な出費を考えると、気軽に大金を投じる気にはなれません。
結論からお伝えすると、投資信託でも損する可能性はあります。ただし、値下がりしただけで失敗と決まるわけではありません。この記事では、損失が生まれる仕組みや初心者に多い失敗例、NISAの注意点を整理し、家計を守りながら始める手順まで解説します。
投資信託で損することはある?まず知りたい基本
投資信託は預貯金ではなく、株式や債券などへ投資する金融商品です。運用が順調なら資産の増加を期待できますが、相場によっては購入金額を下回ります。まずは損失が生まれる理由と、画面に表示されたマイナスをどう捉えるか整理しましょう。
投資信託は元本保証ではない
投資信託では、投資家から集めた資金を運用会社が株式や債券などへ投資します。投資先の価格が下がれば、投資信託の値段にあたる基準価額も下落します。
金融庁も、株式や投資信託などの運用商品には元本割れのおそれがあると案内しています。NISA口座で買った場合も、元本が保証されるわけではありません。
| 主なリスク | 値下がりする場面 | 確認したい内容 |
|---|---|---|
| 価格変動リスク | 株式や債券の価格下落 | 主な投資対象 |
| 為替変動リスク | 円高による海外資産の目減り | 為替ヘッジの有無 |
| 金利変動リスク | 金利上昇による債券価格の下落 | 債券の組入比率 |
| 信用リスク | 国や企業の信用力低下 | 投資先の分散状況 |
どのリスクが大きいかは、商品によって変わります。国内債券を中心に運用する商品と、海外の成長企業へ集中投資する商品では、値動きの幅が同じではありません。名称や人気だけで判断せず、中身まで確認する必要があります。
商品の詳しい情報は、購入前に渡される交付目論見書で確認できます。交付目論見書には、投資方針、投資リスク、運用実績、費用など、購入判断に必要な項目が掲載されます。
たとえば、2年後に必要な子どもの入学費用を投資へ回すと、支払時期に相場が下がっている恐れがあります。近いうちに使うお金は預貯金で残し、当面使わない余裕資金を投資へ回すほうが家計を守れます。

含み損と確定損は意味が異なる
証券口座の画面にマイナスが表示されると、すぐにでも売りたくなる人もいるでしょう。ただし、保有中の値下がりと、売却して決まった損失は意味が異なります。
- 保有中に生じる含み損
- 売却後に決まる確定損
- 分配金を含む運用損益
- 費用を引いた実質損益
10万円で購入した投資信託が9万円になった場合、保有中なら1万円の含み損です。9万円で売却すれば、その時点で1万円の損失が確定します。保有を続ければ価格が戻る場合もありますが、さらに下がる可能性も残ります。
そのため、「売らなければ損ではない」と言い切るのも正確ではありません。含み損も資産価値が減っている状態には変わらず、回復が約束されているわけではないからです。
一般的な投資信託を現金で購入する場合、通常は購入代金を超える追加負担は生じません。ただし、レバレッジ型など値動きの大きな商品もあるため、初心者は商品名だけでなく投資方針まで読む必要があります。

初心者が投資信託で損する代表的な失敗例
投資信託で後悔する原因は、相場の下落だけではありません。人気だけで商品を選んだり、生活に必要なお金まで投じたりすると、少しの値下がりにも耐えられなくなります。よくある失敗を先に知れば、同じ行動を避ける材料になります。
人気や過去の成績だけで商品を選ぶ
証券会社のランキングやSNSで話題の商品を見ると、「多くの人が買っているなら安心」と感じる人もいるでしょう。しかし、人気の高さと、自分の目的に合うかどうかは別の話です。
| 選び方 | 見落としやすい点 | 代わりに見る項目 |
|---|---|---|
| 人気ランキング | 一時的な資金流入 | 投資対象と運用方針 |
| 直近の高リターン | 高値で買うリスク | 長期の値動き |
| 知人のおすすめ | 家計状況の違い | 運用目的と期間 |
| 分配金の多さ | 元本の払い戻し | トータルリターン |
過去の成績は参考になりますが、将来の利益を約束する数字ではありません。直近1年間だけ好調だった商品より、何へ投資しているのか、どれほど上下するのか、保有中にいくら費用がかかるのかを確認したほうが納得して保有できます。
分配金にも注意が必要です。投資信託の分配金は信託財産から支払われるため、支払われた分だけ基準価額が下がります。収益を超えて分配された場合は、投資した元本の一部が戻っているケースもあります。
毎月お金が入るだけで「利益が多い商品」と判断せず、分配金と基準価額を合わせた運用結果を確認しましょう。
生活費を使い、一度に多額を投資する
相場が上がっていると、「今すぐ買わないと乗り遅れる」と焦りやすくなります。しかし、生活費や近いうちに使うお金まで投資すると、値下がりを待つ余裕がなくなります。
- 毎月の生活費からの投資
- 教育費や住宅資金の投入
- ボーナス全額での一括購入
- ひとつの商品への集中
半年後に車検や入学準備を控えている家庭で、その支払い分まで投資へ回すのは避けたいところです。必要な時期と相場の下落が重なれば、損失を抱えたまま売らざるを得ません。
投資額は「いくら増やしたいか」ではなく、「いくらなら減っても普段の生活を続けられるか」から決めます。月1万円が気になるなら、月3,000円や5,000円から始めても構いません。
少額では意味がないと感じる人もいますが、最初の目的は短期間で利益を出すより、値動きに慣れながら家計に合う金額を探す点にあります。
値下がりに驚いてすぐ売却する
投資を始めた直後に相場が下がると、「これ以上減る前に売ったほうがよい」と考えがちです。私も家計を預かる立場なので、評価額が毎日減っていけば落ち着かないと思います。
ただ、値下がりの理由や商品の中身を確認せずに売ると、価格が下がった場面で損失を確定させる結果になります。
| 値下がり時の行動 | 起こりやすい結果 | 先に確認する点 |
|---|---|---|
| すぐ全部売る | 損失の確定 | 資金を使う時期 |
| 積立を止める | 安値での購入中断 | 家計への負担 |
| 別商品へ移る | 売買の繰り返し | 現商品の投資方針 |
| 急に買い増す | リスクの取りすぎ | 余裕資金の範囲 |
一方、どの商品でも保有を続ければよいわけではありません。想定より値動きが激しい、費用が高い、特定の国や業種へ偏っていたなど、商品選びに問題が見つかる場合もあります。
値下がりしたら、相場だけを見て売買を決めず、運用目的、使用時期、商品の中身を順番に確認しましょう。家計が苦しくなっているなら、積立額を減らす判断も現実的です。

投資信託の損失を抑えるために意識したい対策
投資信託の損失を完全になくす方法はありません。それでも、購入時期や投資先を分ければ、特定の相場環境へ資産が偏る度合いを抑えられます。高い利益を急いで狙うより、下落しても続けられる仕組みを考えましょう。
長期・積立・分散を組み合わせる
資産形成の基本としてよく挙げられるのが、長期・積立・分散です。3つは同じ意味ではなく、それぞれ異なる役割をもちます。
- 長い期間での運用
- 定額による継続購入
- 地域や資産の分散
- 無理のない積立金額
積立投資では、決まった金額を定期的に購入します。価格が高いときは買う量が少なくなり、安いときは多くなります。買う時期を一度に決めずに済む点が利点です。
分散投資では、投資先を複数の地域や資産へ分けます。ひとつの国や業種が不調でも、資産全体への影響を抑えやすくなります。金融庁も、長期・積立・分散を、投資リスクと付き合いながら資産形成を進める選択肢として紹介しています。
ただし、長く積み立てれば必ず利益が出るわけではありません。運用終了の直前に大きな下落が起きる可能性もあります。お金を使う時期が近づいたら、一部を現金へ戻すなど、出口も考えておきましょう。
手数料と純資産総額を確認する
投資信託には、購入時だけでなく、保有中や売却時に費用がかかる場合があります。特に信託報酬は保有中の資産から継続的に差し引かれるため、運用期間が長いほど結果へ影響します。
| 確認項目 | 内容 | 主な確認場所 |
|---|---|---|
| 信託報酬 | 保有中にかかる費用 | 交付目論見書 |
| 購入時手数料 | 購入時に払う費用 | 商品ページ・目論見書 |
| 信託財産留保額 | 売却時にかかる場合がある費用 | 交付目論見書 |
| 投資対象 | 株式・債券・地域など | 商品概要 |
| 純資産総額 | ファンドの資産規模 | 月次レポート |
| 繰上償還条件 | 予定より早く終了する条件 | 交付目論見書 |
交付目論見書では、投資リスクだけでなく、購入時手数料や信託報酬などの費用も確認できます。
純資産総額が小さいからといって、すぐ危険な商品になるわけではありません。ただし、資金流出などで規模が縮小し、信託約款に定めた条件へ達すると、予定より早く運用を終える「繰上償還」が行われる場合があります。
投資信託協会によると、繰上償還の条件は信託約款に定められており、残存口数が一定規模を下回った場合などが例として挙げられます。
純資産総額を見る際は、現在の金額だけでなく、資金が継続して流出していないかも確認します。費用の安さや規模の大きさだけで決めず、投資対象と値動きも含めて選びましょう。
NISAでも元本割れする可能性がある
NISAは、投資から得た売却益や分配金が非課税になる制度です。税負担を抑えられますが、投資信託の価格下落を防ぐ仕組みではありません。
- 運用益に対する非課税
- 元本保証のない金融商品
- NISA損失の通算不可
- NISA損失の繰越不可
NISA口座で投資信託を買っても、基準価額が下がれば元本割れします。また、NISA口座で発生した損失は、特定口座や一般口座で得た利益と損益通算できません。翌年以後へ損失を繰り越す繰越控除も利用できません。
対象外になるのは、NISA口座内で発生した損失です。課税口座で生じた上場株式等の譲渡損失は、一定の要件を満たして確定申告を行えば、配当所得等との損益通算や翌年以後3年間の繰越控除を受けられる場合があります。
NISAの年間投資枠をすべて使う必要はありません。制度上の限度額より、家計の余力を優先します。毎月の収支に余裕がなければ、預貯金の確保や固定費の整理から始めるほうが安心です。

失敗例から学ぶ投資信託の始め方
投資信託を始める際は、最初から商品ランキングを見る必要はありません。先に目的と家計を整理すれば、投資額や商品選びで迷いにくくなります。給料やボーナスを無理に投じず、値下がりしても日常生活を続けられる金額から始めましょう。

初心者が投資信託を始める5つの手順
投資信託を始める流れは、次の5段階です。
- 投資目的の設定
- 生活防衛資金の確保
- 毎月の積立額の決定
- 投資先と費用の確認
- NISA口座での積立設定
最初に、何のためのお金を準備するのか決めます。老後資金なら長い運用期間を確保できる人もいますが、3年後の教育費では値下がりから回復するまで待てない恐れがあります。
次に、病気や失業、家電の故障などへ備える現金を残します。必要な金額は家族構成や働き方で異なるため、一律には決められません。毎月の生活費と、家庭で起こりやすい急な出費から考えます。
積立額は、相場が下がっても継続できる金額にします。最初から大きな金額を入れず、少額で値動きに慣れてから増やす進め方でも十分です。
商品を選ぶ際は、投資対象、信託報酬、純資産総額、繰上償還条件を確認します。NISAを利用する場合も、非課税だけに目を向けず、元本割れの可能性を受け入れられるか考えましょう。
値下がりしたときは3つの順番で確認する
積立を始めたあとに値下がりしたら、最初に資金を使う時期を確認します。老後まで20年以上ある人と、来年に支払いを控えている人では、同じ下落でも取るべき対応が違います。
次に家計への負担を見直します。積立によって生活費が足りなくなっているなら、積立額を減らすか、一時停止する選択もあります。投資を続けるために生活費を借りるような状態は、本末転倒です。
最後に、保有商品の中身を確かめます。市場全体の下落に連動しているのか、特定の国や業種へ偏った商品だけが大きく下がっているのかで判断は変わります。
「下がったら必ず買い続ける」「含み損なら絶対に売らない」と決めつける必要はありません。相場への恐怖や期待だけで動かず、使用時期、家計、商品内容の3点を並べて判断しましょう。
まとめ:投資信託は損失を理解して少額から始める
投資信託では、相場や為替の動きによって元本割れする可能性があります。NISAを使っても、値下がりそのものは防げません。
ただし、一時的な値下がりと、準備不足や感情的な売買による失敗は分けて考えられます。
生活費や近いうちに使うお金を残し、余裕資金の範囲で積み立てる。投資先と購入時期を分け、手数料や純資産総額も確認する。派手さはありませんが、仕事や子育てを続けながら資産形成へ取り組むなら、無理なく続けられる仕組みのほうが現実的です。
私も家族をもつ立場なら、最初から大金は入れません。家計に響かない金額で始め、値下がりしたときに自分がどれほど不安になるかも確かめます。
投資信託は、短期間でお金を増やすための近道ではありません。損失の可能性まで理解したうえで、将来へ向けて少しずつ準備する選択肢です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定商品の購入を推奨するものではありません。投資判断は商品の交付目論見書などを確認したうえで、ご本人の責任で行ってください。

